結ランドスケープデザイン

Works 事例紹介

コモンスペースを配した定期借地権戸建分譲

文京区の戸建メインの住宅地。都内でも人気の高い文教地区に程近い企業所有の土地を有効活用するため、定期借地とし、戸建住宅地として利用する検討が既に重ねられていましたが、区割りの発想を大きく転換した新たな提案を行いました。

最初の区割り案

現地調査によれば、敷地の周囲は密集していて道路も狭いロケーション。8棟もしくは9棟に土地を区割したいという事業者の要望を満たし、かつ魅力的な街並み提案として検討されたのが以下の3案です。

A案(8棟案)

8棟案は、車の転回スペースを兼ねたエントランスコート風のオープンスペースを中心に計画。オープンスペースの周りに2階建て、奥に3階建ての住戸を配し、連続的な広がりと街並みの風格が感じられる配棟計画を目指しました。
また駐車スペースも建物の間に自然に収まり、オープンスペースが車で埋まることのないよう配慮された計画案としました。

B案(9棟案-1)

9棟案-1は原案の9棟案をシンプルに整理し、敷地延長の通路部分は2つに分け、中心には住戸を配しオープンスペースを細切れに。
その代わりに各住戸の小さな庭を巡るようなフットパスを挿入し、小さなオープンスペースを繋ぐことで住民だけの連続する緑景を実現し、子供達が家の近所を駆け回る等懐かしい情景を甦らせるような、まちづくりへの夢を込めた区割計画案としました。

C案(9棟案-2)

9棟案-2は、都内の戸建住宅では希少なゆとりあるコモンスペースを擁したインパクトある案としました。
9棟がそれぞれの敷地の一部を拠出して出来上がるコモンスペースでは、休日に親子でボール遊びができ、時にはピクニックシートを広げてランチやエクササイズなど、多目的に利用することを想定。駐車スペースをビルトインにしながら入念な区割計画で3階建ての住戸群をつくり、1階はそれぞれの趣味の部屋や書斎、SOHOなど視線を気にせずオープンにできる部屋の配置を想定し、街区全体で一つのコミュニティを形成できるようになっています。
この事例は、定期借地+戸建という形態が計画の可能性を自在に広げるというひとつのケーススタディとなりました。

定期借地と戸建住宅

生活スタイル・働き方の変化、少子高齢化、環境への配慮が課題となる中、これまで宅地開発の中での提供公園の計画や紳士協定など、戸建住宅の住環境形成への様々な試みが行われてきました。しかし、所有権意識の強さ、開発コスト上乗せによる経済的負担、共有関係の不安定さ、管理の困難性などの多くのハードルがあり、コモンスペースとしては国内ではなかなか理想的な形が実現しない現状があります。
今後、戸建市場にも定期借地という選択肢を確立するための協定や組合づくりなど、ソフト面での多様な取り組みが課題と考えます。